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ブランド構築支援 IMC理論 主な受賞作品
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5.ブランドと広告

いかに素晴らしい商品を開発しようとも、顧客にその存在を知らせることができなければ、事業として成り立ちません。より多くの人々に対して短時間に商品の存在を告知するために、広告は重要な役割を持っています。ただしマーケティングの第一人者フィリップ・コトラー氏が言うように、「広告は主として製品を認知させるものであり、時として製品知識を与えるが、製品の選考を高めることは少なく、購買の引き金になることはめったにない」*ということに注意する必要があります。

ブランド構築を考える時、往々にして広告キャンペーンの展開へと話が直結してしまいがちですが、ブランドは人々の経験を通じて得たパーセプションが、心の中に蓄積され形成されていくものです。広告はコトラー氏が言うように購買の引き金になることすらめったにないのですから、人々のブランド経験につながることはほとんどないと言っていいでしょう。

さらにコトラー氏は著書の中で、「人々は広告に対して、いっそう醒めた態度を取り、注意を払わなくなってきている。かつて広告に多額の資金を投じていたコカ・コーラの元副社長、セルジオ・ジーマンは近年、次のように述べている。『われわれが知っている従来型の広告は、すでに終焉を迎えた』。続いてジーマンは、広告を以下のように再定義している。『広告はテレビコマーシャルをはるかに超えたものだ…それはブランディング、パッケージング、著名人による推奨、後援、広報活動、顧客サービス、従業員の処遇、さらには秘書の電話対応の仕方までをも含んだ活動なのである』。彼の言葉は実質的にマーケティングの定義になっている」*と言っています。
*『コトラーのマーケティング・コンセプト』東洋経済新報社

●ブランディングと広告の活用法

では、ブランド構築のためにどのように広告を活用するべきなのでしょうか。広告の活用の前に考えるべきことは、パブリック・リレーションの活用です。パブリック・リレーションは広告と違い、記者発表したからといって、ニュースや記事になるという保証はありませんし、自分の言いたいことをその通り伝えてくれるという保証もありません。しかし、逆に考えるとマスコミが取り上げたいとも思わないような製品は、そもそも商品自体の開発コンセプトに問題があったかどうかのチェックに最適です。その時点での反応を見て、良ければその製品の認知度を早く広く高める手段として、広告に展開してゆくというやり方が賢明でしょう。

また、広告には告知機能のほかに防衛機能があります。既に十分にブランドが浸透している状態で、そのブランド経験を覚醒させ、人々の心の中のブランド意識を明確化することで、ブランドにダメ押しの強化を図ることが可能です。これは特に競合他社が、先行している自社ブランドに対し追い上げをしてくることに備えての防衛策として効果が高いものと考えられます。


●広告は、量より質

また、広告を実施する際に最も重要なことは、広告メッセージの質の高さです。広告メッセージの質の高さとは、単に独創的であり芸術的にクオリティが高いということだけでなく、自社のマーケティング戦略で狙ったターゲット層の心理に狙い通りのパーセプションを与える機能的なものでなければならないという点です。つまり戦略と広告表現が、IMC化されていなければならないのです。そういった意味で広告は、芸術的表現を超えた高度なものでなければなりません。

クリエイティブ・ワークは、戦略を実現するために非常に重要です。IMCを実践する上で最も困難な課題は、戦略を見事なクリエィティブ表現に翻訳し、結果を出す戦術として機能させることです。いかに素晴らしいマーケティング戦略が立案されようとも、広告メッセージ化に失敗すれば、絵に描いた餅になってしまう上に、意図しないブランドイメージを垂れ流すことになってしまい、ブランドに壊滅的なダメージを与えてしまうことすらあります。

これを難しくしている一因として、デビッド・オグルビー氏が言うように、「広告という事業は…広告をつくる人間、モノを売る術を知らない人間、生まれてこのかたモノを売ったことなど一度もない人間…モノを売ることを軽蔑している人間、才能をひけらかすことだけを人生の使命とこころえ、己の独創性や才能を誇示するために広告主から金をだまし取る人間のために汚されつつある」*という現象です。広告表現に芸術性が必要となるがゆえに、芸術に関心はあっても企業のマーケティング戦略に関心の薄いクリエイターに、深い部分での戦略の狙いを理解してもらい、表現として再構築してもらうということが、何よりも最も難しいという現実に、まずは打ち勝たなければならないのです。
*『コトラーのマーケティング・コンセプト』東洋経済新報社

次に戦略を有効に機能させるために、いくつかの重要なクリエイティブ・ワークのチェック・ポイントを示します。これらは、クリエイターとの相互理解の上でも、役に立つガイドラインになります。

1 顧客の視点から見て、有効なクリエイティブ・ワークを行うこと。

2 ミッション(使命)でなくポジションを示していること。
つまり、「地球にやさしい」とか、「人類の明日のために」という類の抽象的な企業のミッションをいくら連呼しても、人々の心に届かないということです。そうした企業の使命感を持っていることは、持っていないよりは良いとしても、企業がその使命をどのように実現しているかという具体的なポジションを示さなければ効果はありません。

3 ターゲット層の人間心理を考えた表現テイストを実現すること。(「ブランド上位形成の法則」参照)

4 訴求するものが与える実際のインパクトを超えた誇大表現によって、顧客の失望を招かないこと。

5 できるだけリアリティのある表現を試み、実際のブランド経験の擬似体験にチャレンジすること。

6 独創的であり、制作クオリティが高いこと。

これらのすべてのチェック・ポイントをクリアしたものは、戦略を機能させることができる広告メッセージであると言えます。しかし、そのためには試行錯誤とそれを吟味する十分な時間・予算が必要になります。広告予算をムダにした上に、かえってブランドにダメージを与えてしまうことにならないよう、広告メッセージづくりには、十分な準備をする必要があります。


●インターネットが広告のあり方を変えてゆく

また、近年のインターネットの急速な発達が、古くからの考え方であるパブリック・リレーションや広告という概念を、根本から変えようとしていることは、ブランディングやマーケティング・コミュニケーションを考える上で、大変重要なパラダイム転換であると言うことができます。

インターネットのWebサイトは、これまでマスコミだけが持っていた情報の伝達手段という特権を、あらゆる組織や個人にまで分け与えることを可能にしました。これにより今や、あらゆる企業や個人が膨大な量の情報を、インターネットを通じて双方向にやり取りすることを可能にしたばかりではなく、ヤフーやグーグルに代表される検索エンジンやニュースポータルサイトに、広告やパブリック・リレーションが揮然一体となってシームレスに展開されています。また、インターネットコミュニティーの世界では、掲示板からブログやツイッター、SNS、フェイスブックなど次々と新しいコミュニティーツールが開発され進化することに合わせて、従来小さくて目に見えない存在であった「口コミ」が、全く新しい「デジタル口コミ」の世界として創造されてきています。その象徴的存在として、いわゆるアフェリエイターという、自分のWebサイトやブログの中でEC(エレクトロニック・コマース)サイトの紹介をして、その紹介によってECサイトのサービスが誰かに利用されたときに成果報酬を受け取る人達も登場してくるなど、インターネットコミュニティーの発達とECは相乗的に急成長を遂げ、大変大きな存在となってきました。今後も、スマートフォンの爆発的普及により、さらにインターネットの存在は人々に身近なものとなり、その存在価値はより一層高まるものと考えられます。

こうした複雑な情報化時代においては、従来型のパブリック・リレーションや広告の手法と、「デジタル口コミ」の世界をうまく統合し、ブランディングを成功させる必要があります。ただでさえ、バラバラになってしまいがちなブランド・コミュニケーションを、より戦略的かつ複合的にIMC化していく必要性が高まっているのです。